No.71(中世のたそがれ)  : 

「14世紀中頃のペストの流行は西欧をどう変えたか?」

11世紀から鉄製有輪犂や牛耕農法が普及し、その頃から14世紀にかけての荘園
の変化(直営地が保有地に組み込まれて賦役が消滅。貢納の貨幣地代化)も伴っ
て農民の経済力がアップした。また、14世紀半ばのペスト流行で、生き残った農民
に対する待遇が改善されることによりその地位も向上した(英国では独立自営農民
<ヨーマン>が発生)これによって諸侯・騎士の地位はさらに下がり、封建制は崩
れていった。

<評価の観点>
関心・意欲・態度:
病気が歴史を変えた代表例としての、「ペストと中世の黄昏」について、大きな関心
を持ちながら意欲的に学習に取り組もうとしている。

思考・判断:
封建地代に依存する領主層にとってペストによる農民激減は致命的な出来事であ
るため、生き残った農民に対する待遇の改善が現出したことを、的確に判断している。

資料活用の技能・表現:
「死の舞踊」や「メメント・モリ」を表す様々な図版資料を見て、14世紀のペスト禍の
大きさとともに、死が極めて身近なものであった、中世ヨーロッパ社会を生きた人々
の精神性に対する想像を膨らませている。

知識・理解:
中世農業革命や商品経済の活発化を背景とした賦役の消滅などにより、すでにその
地位を高めていた農民をペストが襲ったため、イギリスにおけるヨーマンの発生に象
徴される「中世農奴解放」が決定的になったことについて、基本的な知識を身につけ
ている。